「住宅購入の決め手は、営業担当さんでした」
「営業担当を見て、その物件を買うかどうか決めた方がいい」
こういう話を見かけることがあります。
たしかに、住宅購入で営業担当の存在は大きいです。
何千万円もする買い物ですし、わからないことも多いです。
質問しやすい人か。急かしてこない人か。こちらの話をちゃんと聞いてくれる人か。
担当者とのやりとりで、「この人なら任せられそう」と思えると、気持ちが前に進むのもよくわかります。
私自身、以前は新築マンションの営業をしていました。
だからこそなのか、「営業担当が良いから、この家にする」「担当が苦手だから、この物件はやめる」という話には、少し違和感があります。
営業担当が大事ではない、という話ではありません。
むしろ大事です。
でも、営業担当を理由に家を買うのも、気に入った物件を見送るのも、私は少しもったいないと思っています。
家は、入居してから何年、何十年と暮らす場所です。
一方で営業担当との関係は、基本的には契約から入居までの数か月から1〜2年ほど。
だから住宅購入では、「営業担当が好きかどうか」と「この家で自分たちらしく暮らせるか」を、いったん分けて考えてみてもいいのではないかと思うのです。
元マンション営業だった私が、「将来マンションを買うんですか?」と聞かれていた頃

新築マンションの営業をしていた頃、戸建てと迷っているお客様からよく聞かれました。
将来、マンションを買いますか?
「もちろんマンションです。」という私の回答を求めてお客様も聞いていたと思います。
でも私は、正直に「わからないです」と答えていました。
誰と結婚するのか。
どんな働き方をするのか。
子どもがいるのか、何人なのか。
どこで暮らしたいと思うのか。
その時点では、私自身の生活がどうなるか決まっていなかったからです。
マンションにも戸建てにも、それぞれ良さがあります。
でも「マンションが正解か」「戸建てが正解か」ではなくて、住む人に合うかどうかの方がずっと大事だと思い、それを伝えていました。
そして今、私は注文住宅を考えています。
以前は通勤していたので、駅から近いことはかなり大きな価値でした。
でも今は在宅勤務が中心です。
通勤しないなら、駅徒歩数分の便利さに、以前と同じだけのお金を払いたいかと言われると、答えはノーです。
夫とこんな会話をしています。
駅近じゃなくてもいいなら、選択肢かなり増えるよね
でも子どもの通学や毎日の買い物の利便性は考えたいよね
まだ答えは出ていません。
自分たちがこれからどんな生活をしたいのか。
何にお金を使いたいのか。
便利さと広さなら、どちらを優先したいのか。
そういうことを、夫婦で少しずつ言葉にしていく作業なのだと思います。
私が今、戸建てや注文住宅を考えているのも、マンションが悪いと思っているからではありません。
在宅勤務になって、立地の良さの優先度が変わったこと。
家族で長く住む前提の家を考えるようになったこと。
今の私たちには、戸建てという選択肢も合うかもしれないと思ったからです。
物件のメリットを説明できる営業担当は多い。でも、それだけでは足りない

新築マンションの営業をしていた頃、物件のメリットを説明することは日常でした。
「眺望がいいですよ」
「駅から徒歩○分です」
「スーパーも病院も近いです」
「構造面も安心です」
どれも事実ですし、住宅営業として伝える必要があることです。
でも、こうした説明を聞いているうちに、モデルルームや住宅展示場の空気もあって、気持ちが上がってしまうことがあります。
きれいなキッチン。
広く見えるリビング。
新しい設備。
でも同時に考えたい。
この家に住んだら、住宅ローンを払いながら旅行にはどのくらい行けるんだろう。
子どもの習い事や教育費が増えたときも、今と同じように働けるのかな。
車を持つなら、駐車場代や維持費も含めて考えた方がいいのかな。
駅から遠い代わりに家が広いなら、毎日の送迎や買い物はどうなるんだろう。
物件のメリットが、自分たちにとってもメリットなのか。
そのために何を優先して、何を少し手放すことになるのか。
そこまで考えて初めて、「この物件が自分たちに合うかどうか」が見えてくる気がしています。
私が思う、良い営業担当とは
私は、良い営業担当は「物件の魅力をたくさん話せる人」ではないと思っています。
もちろん、物件に詳しいことは大事です。
ただ、眺望や駅距離、設備の説明だけなら、資料やホームページでもある程度はわかります。
私が営業担当に求めたいのは、その物件を私たちの生活に引き寄せて、一緒に考えてくれることです。
たとえば、
「今後、お子さんは何人くらい考えていますか?」
「働き方が変わる可能性はありますか?」
「転勤や、ご実家の近くに住み替える可能性はありますか?」
「家にいる時間は、どんなふうに過ごしたいですか?」
「住宅費が増えたら、逆に減らしたくないお金はありますか?」
こういう話を聞いたうえで、
「駅近は魅力ですが、在宅勤務が続くなら、少し駅から離れても広さを取った方が満足度は高いかもしれません」
「この間取りだと、お子さんが大きくなった頃には少し手狭に感じるかもしれません」
「購入できる予算ではあります。ただ、旅行や教育費も大事にしたいなら、もう少し余裕を残す考え方もあります」
と、物件のデメリットや、迷うポイントまで話してくれる人。
私は、そういう営業担当から買いたいです。
正直、私がお客さんなら、自分から買いたいと思っていました。笑
住宅営業をしていた頃から、物件を売ることよりも、「その人にとって合うか」を一緒に考える方が大事だと思っていたからです。
住宅購入は、契約がゴールではありません。
住み始めてからの生活の方が、ずっと長いです。
「私たちにこの物件は合うと思いますか?」と聞いてみる
住宅購入で営業担当の見分け方がわからないときは、私はこんな質問をしてみるのも一つだと思います。
私たちに、この物件は合うと思いますか?
そう思う理由と、逆に気になる点があれば教えてください。
少し聞きにくい質問かもしれません。
でも、営業担当がどんなふうに考えているかは、意外と見えやすくなると思います。
資料に書いてあるメリットを並べるだけなのか。
「絶対に合いますよ」とすぐに言い切るのか。
それとも、家族構成や働き方、予算、今後の暮らし方を確認しながら、良い点と気になる点の両方を話してくれるのか。
もちろん、一度の受け答えだけで、その人のすべてはわかりません。
相性もあります。
ただ、営業担当を判断する材料として、「私たちの生活を見ようとしてくれているか」は大きいと思います。
営業担当が苦手でも、物件まで手放さなくていいかもしれない
営業担当とのやりとりで、なんとなく不信感を持つこともあると思います。
- 質問への答えが曖昧
- 都合の悪そうな話になると話題を変える
- 「今日決めないとなくなります」と急かされる
- 資金計画が、今の収入で借りられる金額の話だけになっている
こういう違和感は、私は無視しない方がいいと思います。
営業担当にも、個人の目標があります。
営業所の目標もあります。
会社として今売りたい物件や、期限までに動かしたい在庫があることもあります。
値引き提案をするかどうか。
どの住宅ローンを最初に提案するか。
金利が上がった場合の話を、どこまで説明するか。
すべての営業担当が悪意を持っているわけではありません。
でも、営業担当の事情と、買う側の人生設計がいつも同じ方向を向いているとも限りません。
だからこそ、担当者に違和感があったときは、まず担当者を抜きにして、その物件自体を考えてみてもいいと思います。
「この人が担当じゃなかったとしても、この家はやめようと思うかな?」
「立地、間取り、予算、周辺環境は、私たちの優先順位に合っているかな?」
もし答えが「はい」なら、物件まで諦めなくてもいいかもしれません。
担当変更をお願いする。
上司に同席してもらう。
別の担当者から説明を受ける。
そういう選択肢もあります。
担当を変えてほしいと言うのは、少し気まずいですよね。
でも、家は長く住むものです。
営業担当との数か月の気まずさより、その家で暮らす何年、何十年の方がずっと長い。
そう考えると、物件の判断と担当者への違和感は、分けて整理してもいいのではないかと思います。
営業さんがいい人だから、この家にする。その前に考えたいこと
反対に、営業担当がとても良い人で、「この人から買いたい」と思うこともあると思います。
これは、住宅購入の体験としてとても素敵なことです。
不安なときに話を聞いてくれて、こちらの迷いにも付き合ってくれて、信頼できる人がいる。
それは大きな安心材料です。
ただ、契約前に一度だけ、家族でこんな話をしてみてもいいかもしれません。
「営業さんが担当じゃなかったとしても、この家を選びたいと思う?」
「私たちは、この家のどこがいいと思っているんだっけ?」
「逆に、気になっていることは何だっけ?」
気になる物件が出てきたら、良い点と気になる点をそれぞれ言葉にする時間が必要だなと思っています。
営業担当が良い人だから、その物件の魅力がより大きく見えることはあります。
でも、その営業担当がいなかったとしても、自分たちの言葉で「この家を選びたい理由」と「受け入れる不便さ」を説明できるなら、購入の判断はずっと納得しやすくなる気がします。
住宅購入で営業担当より大事にしたいのは、自分たちの暮らしの優先順位

営業担当への信頼感も、違和感も、住宅購入では大事な材料です。
ただ、それをそのまま「買う」「買わない」の答えにしなくてもいい。
営業担当が良い人なら、その人の力を借りて、自分たちがどんな暮らしをしたいのかを言葉にしていく。
営業担当に不信感があるなら、担当変更や上司同席も含めて、物件そのものを落ち着いて判断できる状態をつくる。
私が元マンション営業だったのに、今は注文住宅を考えているのも、住宅の正解は一つではないと感じているからです。
駅近マンションが合う人もいる。
利便性より広さを取りたい人もいる。
転勤や住み替えの可能性を残しておきたい人もいる。
家にかけるお金を抑えて、旅行や教育、投資に回したい人もいる。
どれが正しいというより、自分たちが何を大事にして暮らしたいかで、選び方は変わるのだと思います。
「営業さんが良い人だから、この家にしよう」
「担当が苦手だから、この物件はやめよう」
そう思ったときは、少しだけ立ち止まってみる。
そして、「私たちは、この家でどんな生活を送りたいんだっけ?」と考えてみる。
営業担当は、家を決める理由そのものではなく、自分たちに合う家を判断するために力を借りる存在。
私は今、買う側になって、そんなふうに思っています。


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